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リレーメッセージ

世界へ通じる対話力。vol.2

2011年2月の第二号は4月より英語コースで教鞭を執る松木啓子教授からのメッセージです。グローバル・コミュニケーション学部の特徴の一つは「少人数教育」。講義では、様々な討論(discussionやdebate)を行う機会が多くなります。お互いに異なる意見を主張しながら最終的にはわかり合うことを目的とする討論を行う時の大切なことの一つとして、「相手に伝え、納得をしてもらう」ことが挙げられます。伝えるだけであれば、比較的容易ですが、納得までしてもらうのは非常に難しいことです。今回の松木教授からの問いかけにあなたならどのように答えますか?考えながら読み進めていってください。

反論の試み

グローバル・コミュニケーション学部(英語コース教授)松木 啓子※

「ことばは単なる道具であり、肝心なのはメッセージ、つまり、内容や情報です。」巷ではよくこう言われています。

異議あり!

こんにちは。英語コース教員の松木です。私の専門は言語人類学という分野で、特に、コミュニケーションに焦点をあてながら人間と記号のダイナミックな関係について研究しています。このエッセイでは、言語人類学で育まれてきたコミュニケーションへの視点に基づきながら、上記の通説に反論を試みたいと思いま す。
まず、前半の「ことばは単なる道具」という部分です。本当にそうなのでしょうか?皆さんはどう思われますか?私は、「ことば」は「単なる道具」なんかで はないと思います。確かに、「ことば」は「使うもの」です。習慣的な表現として、「ことばを使う」とか「ことばを用いる」と言いますよね。同時に、「道具を使う」とか「道具を用いる」と言いますよね。こうした表現上の問題(専門的には「レトリック」と言いますが、長くなりますので入学後に改めて)が私達のものの見方そのものに大きく影響するのです。例えば、ここでは、「使う」という動詞をめぐって「ことば」と「道具」の間に共通性が生まれます。つまり、ふたつの全く異なる対象が「使われるもの」というところで全く同等なものとして捉えられてしまうのです。それで、「ことばは道具」という考え方が何か自然であるのかの様な印象を生み出すのです。これが、そもそもの誤解の始まりだと思います。「道具」というと、複雑なものにせよ単純なものにせよ無機的なものが 一般的です。ですが、私は「ことば」は有機的なものだと考えます。つまり、様々な要素が緊密に繋がりながら生き物のように変化し得る存在。語彙や文法は氷山の一角であって、その根底に文化や社会の問題が深く関わり、また、実際のコミュニケーションでは話者、聞き手、状況など様々なことが複雑に連動しあっているのです。もし皆さんが21世紀を生きるグローバル市民として、きちんとしたコミュニケーションができるプロフェッショナルになりたいと考えているのでしたら、何語であろうと、「ことばは単なる道具」という通説に疑問を持って欲しいと思います。
次に、後半の「肝心なのはメッセージ、つまり、内容や情報」という部分に移りましょう。勿論、メッセージは重要です。内容や情報がなければ、つまらないコミュニケーションがたくさんありますね。ですが、私達のコミュニケーションは内容や情報のやり取りだけなのでしょうか?例えば、私達が毎日している「挨拶」について考えてみましょう。挨拶に内容や情報はありますか?いいえ。それでも、挨拶は重要です。挨拶をしないことで人間関係が壊れたりすることさえあります。その理由は、挨拶には内容や情報などのメッセージがなくても、他に目的があるからです。それは、人と人をつなげることです。気持ちを通い合わせることです。たとえ当人たちが「つながっている」と実感しなくても、お互いに何か大きな共同体の一員であることを再確認させることです。挨拶の目的 は、新しい内容や情報を伝えるのではなく、人と人をつなげて共感の場を創り上げることです(専門的には「交感」とも言いますが、これも詳しくは入学後に!)。この共感の問題はコミュニケーションを学ぶ上で極めて重要な視点です。従って、「肝心なのはメッセージ、つまり、内容や情報である」と決めつけることによって、コミュニケーションの見方が非常に狭くなってしまうのです。
さて、私の反論は説得力があったでしょうか?繰り返しますが、ことばは単なる道具でもなければ、肝心なのはメッセージだけでもありません。この問題について、皆さんにも少し考えてみて頂けたら嬉しいです。

※2011年4月着任予定。現在、言語文化教育研究センター教授。

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