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2020.04.02
ご入学おめでとうございます。皆さんはきっとこのグローバル・コミュニケーション学部で大学生活を始めるにあたって、新しい友人との出会いや、キャンパスでの学びをずっと心待ちにされてこられたであろうと思います。私たち教職員にとっても、新入生の皆さんを迎えるこの季節は、一年のなかでもとりわけ心躍る季節です。けれども、今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、入学式も対面での履修指導も行うことができず、本当に残念に思いました。対面でのご挨拶はできませんでしたが、桜が満開の美しいキャンパスにて、皆さんのご入学を心よりお祝い申し上げます。
さて、世界で急速に感染拡大を続ける新型コロナウイルスは各国で痛ましい犠牲者を出し続けています。私たちはこうした危機的状況のなかで、まずは一人一人の責任を自覚し、感染を食い止めるべく最大限の努力を払う必要があります。若い皆さんは、友人との楽しい語らいや食事、サークルでの活動などを楽しみにしていたでしょう。そうした学生生活でのかけがえのない経験を我慢してくださいと言わなければならないことを、私たち教員もとても辛く感じています。学生たちの活気あるキャンパスがない今になって、そうした「日常」がどれほどかけがえのないものであったかを痛感します。けれども、今はその大切な「日常」を一日も早く取り戻すための時間であると認識して、感染予防に努めていきましょう。
太古の昔から人類は感染症と戦ってきました。私の専門は文学ですが、文学にも様々な感染症との戦いが描かれています。たとえば、開拓者の家族の生活を描いたアメリカの児童文学『大草原の小さな家』(Little House on the Prairie)では、主人公ローラの一家全員が、蚊が媒介するマラリアにかかります。感染症は他の生物と人間、そして、人間と人間の間を文字通りcommunicateします(“communicate” には「感染させる」という意味もあります)。それはある意味、私たちが世界中の人々と、そして地球上のあらゆる生物と共に生きていることの証でもあるのです。『大草原の小さな家』で一家を救ったのは、ドクター・タンという名の黒人医師でした。感染症は人類共通の脅威であるからこそ、文学においては貧富の差や民族の違いを超えた人々の絆の大切さを伝えるためのメタファー(比喩)となるのです。私たちも今、この感染症を克服するため、人間の英知を結集し、協力していかなくてはなりません。
ウイルスがグローバルにcommunicateしている今、皆さんにはもう一度人間の「コミュニケーション」について考えていただきたいと思います。見えないウイルスのコミュニケーションを断ち切るため、私たちは、日常の何気ないコミュニケーションを断ち切られてしまっています。皆さんのなかには、新しい友達を作ることもできず、孤独を感じている人も多いでしょう。そんな時は、SNSを通じて親しい友達とコミュニケーションを取ることもいいですし、普段は忙しくてできない読書をするのもいいでしょう。本は時間や空間の制約を超えて、私たちに様々なことを語りかけてくれます。これも一つのコミュニケーションなのです。そして、このコロナウイルスの後の世界についても思いを馳せてみてください。
これまでの歴史においても、感染症の危機は世界を大きく変えるきっかけとなりました。今、歴史の大きな転換点にあって、皆さんはどんな人と出会い、どんな人生を歩み、どんな社会を創っていきたいのか、想像を巡らせてみてください。「創造」は「想像」から始まります。同志社の校祖、新島襄は「教育は国家百年の大計」と考え、同志社大学の前身である同志社英学校を設立しました。日本が明治維新という大きな変革の時を迎えたとき、一年や二年という短い時間軸ではなく、百年という壮大な時間軸で未来を想像し、同志社という学舎を創造したのです。新島襄のように信念を持って物事を成し遂げることは容易ではありませんが、皆さんにも、ぜひ、大きな時間軸と想像/創造力持っていただきたいと思います。そして、本学部での学びがその一助となることを心より願っています。
2020年4月2日
グローバル・コミュニケーション学部長
玉井 史絵