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トップページ ニュース一覧 第19回(2020年7月7日)

リレーメッセージ

Messages

「世界へ通じる対話力。」をキーワードに教員がさまざまなテーマについて、
それぞれの視点でコラムを執筆します。

第19回(2020年7月7日)英語コース河原 大輔助教

みなさんは今回の新型コロナウイルスの感染拡大の中で、ふとこれからの人と人のコミュニケーションの在り方について考えたことはあるでしょうか?

今回のテーマは英語コースの河原 大輔助教による「『世界的感染』時代のコミュニケーションのかたち」です。学部として「グローバル・コミュニケーション」を標榜する私たちに対して、新型コロナウイルスは否応なく私たち自身の存在意義について問いただしてきました。GC学部に籍を置く教員として、今何を思うのか、是非ご覧ください。

「世界的感染」時代のコミュニケーションのかたち

6月の長雨に降られ、コロナ禍の先行きがまだまだ見通せない状況の中、みなさんへのメッセージを書いています。このメッセージを書こうと思ったのは今回のパンデミックが理由ではありません。正直に言うと、ずっと前からこの原稿は書かなければならなかったのですが、放ったらかしにしているうちにCOVID-19の感染拡大が爆発的に進行し、気がつけば世界が劇的に—それもすごい速さで—変わっていたのです。

コロナ禍の中で迎えた2020年度の新入生へのメッセージの中でGC学部長が触れているように、コミュニケーションとは「感染」の意でもあります。ヒトとモノの国境を越えた自由な交流とウイルスの世界的拡大は「グローバル・コミュニケーション」というコインの裏表の関係にあるという現実を、今回のパンデミックは残酷なまでに私たちに突きつけています。

思えば私たちのコミュニケーション行為には菌の交換という側面が不可分に結びついていました。言葉を交わす、手を握る、ハグをする、恋人同士がキスをする。まるでコミュニケーションの親密さとはお互いに交換する菌の数に比例しているかのようです。親密さを測る指標としての菌。かつて虫歯菌が感染るからと言う理由で幼い我が子にキスをすることを禁じられたお父さんがいました。コロナ以前の世界では例外的に哀れな存在だったかもしれませんが、菌の回避を理由に「密」なコミュニケーションを禁じられる風景は、今では私たちの日常です。

しかし、こうしたフィジカルで密なコミュニケーションが一時停止を強いられた世界で、コミュニケーションを看板に掲げるGCの私たちは自らの特徴を奪われてしまったのでしょうか。我が子へのキスを自粛させられた可哀想なお父さんのように、自らが欲するコミュニケーション表現が解禁されるのを静かに、息をひそめて待ちつづける他ないのでしょうか。

そうではないでしょう。私は、グローバル・コミュニケーション学部の学生たちと、これからこの学部にやってくるみなさんが、この学部を「世界的感染(グローバル・コミュニケーション)」時代のコミュニケーションのかたちについて考えるための知的で、GCらしい快活さをもったプラットフォームへと変えていってくれるだろうという希望を持っています。「何一つ思い通りにならなくても 希望は生き続ける」とはフランスの映画監督ジャン・リュック・ゴダールの言葉です。大学という場所(コミュニティ)で新たなコミュニケーションの方法を再設計していく新しいひとたちに期待することは、末世にスーパー・ヒーローの出現を願うほどには非現実的な夢物語ではないはずです。

グローバル・コミュニケーション学部へようこそ。

みなさんの大学生活が実り多いものでありますように。