『グローバル・コミュニケーション学入門』という本の中で、グローバル・コミュニケーション学とは「『誰に、どんな情報を、どう伝えるか』『誰が発信した、どんな情報を、どう受け取るか』を考える学問」であると説明されています。言葉で説明されると簡単なように思えますが、伝えようとしているメッセージが相手に誤解されてしまう可能性があるため、コミュニケーションの実践には常に困難がつきまといます。グローバル・コミュニケーション学部の4年間の学びの中で、この「伝達のエラー」を減らすためにどのようなことをしていけばよいのでしょうか。
作家・エッセイストの岸田奈美さんは、note(誰もが文章や写真などを投稿することができるメディアプラットフォーム)に掲載した記事『難関中学の入試問題の原作者になったけど設問が解けない理由を考えて、編集者にたどり着いた』の中で、伝達のエラーをなくすためには「編集者の目」が必要だと考察しています。
自身のエッセイが筑波大学附属駒場中学校の入試問題に使われたことを知り、岸田さんはその問題を解いてみようとしますが、設問を解くことができません。そこで、岸田さんの担当編集の方に問題を解いてもらったところ、すべて正解だったそうです。このことから岸田さんは「国語の問題で本当に問われているのは、作者の意図なんかではないのだ。編集者の視点だ。」と気付きます。編集者の仕事とは「伝達のエラーをできるだけなくして、作者と読者をつなぐこと」であり、「文章に込められた意図が正しく伝わるか、が大切なのだ」と岸田さんは書いています。
大学4年間での学びには、興味を持っている分野について新しい知識を得ていく過程が不可欠です(それによって自分が今まで当たり前だと思っていたことがらを新しい視点から見ることができるようになることが、大学での学びの魅力のひとつでもあります)。その一方で、学んだことを自分以外の人に伝えることも必要になります。学問は自分の中だけで完結するものだけではなく、学んだことを最終的に社会にどう還元できるかを考えるものだからです。そのためには、どのような伝え方や表現が最も誤解がないように意図を伝達できるのか、考え続けなくてはなりません。自分が書いたレポートなどを編集者のような第三者の視点から読み返し、よりよい文章を作ることはコミュニケーションについて学び、実践していく上で貴重な経験となるはずです。グローバル・コミュニケーション学部での学びを土台にして、少しでも多くの「編集者の視点」を持った学生が社会で活躍してくれることを期待しています。