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トップページ ニュース一覧 第36回(2026年1月19日)

リレーメッセージ

Messages

「世界へ通じる対話力。」をキーワードに教員がさまざまなテーマについて、
それぞれの視点でコラムを執筆します。

第36回(2026年1月19日)中国語コース肖 海娜准教授

今回のテーマは、中国語コースの肖海娜准教授による「『世界へ通じる対話力』を高めるための土台作り―読書」です。
本メッセージでは、言語運用能力のその先にある対話力の基盤として、「心の中の図書館」という独自の視点から読書の重要性が語られています。
翻訳技術が進展する現代では、背景にある思考・価値観・文化を理解しようとする想像力がより求められます。肖先生は、読書を通じて培われる深い思考力や想像力が、対話を支える重要な要素であることを、具体的な書籍紹介とともに示されています。
本学部が重視する主体的な学び、多角的に考える姿勢とも重なる内容で、大学での学びを深めるうえでも示唆に富むメッセージです。ぜひ「深い思考」を育てる機会として読んでいただければ幸いです。

「世界へ通じる対話力」を高めるための土台作り―読書

「世界へ通じる対話力」と聞いて、流暢な言語力だと答える人が多いのではと思います。

もちろん、私は言語学を専攻しているので、各言語学の知見を通じて習得される「言語」が対話力を形成する上で何よりも重要であると考えています。でも、昨年2025年の年末、特別番組で、習得していない言語でも会話ができるイヤホンの同時通訳機能が紹介されていました(私よりも学生の皆さんの方が最新の翻訳機器については知見が深いと思います)

そこで、もう一度皆さんに伺います。

触れたことのない言語(習得していない言語)でも、ネイティブの人と会話ができる現代で「世界へ通じる対話力」を構成するのは「言語」に加えて何だと思いますか?

私はそれを「心の中にある図書館」だと思います。

人と対話する時(「会話」と「対話」の違いについて深く知りたい方は第35回(2025年10月9日)英語コース坂場大道先生のコラムをご覧ください)、大切なのは、言語の習得と、その語る言語の成り立ちを「理解」すること、言葉の背景にある「深い思考」、相手の文化・社会を理解する「想像力」ではないでしょうか。情報量が多い現代で、SNSを含め様々な媒体から情報を得ることも一つの手段ですが、その「深い思考」「想像力」の土台を築くのは、内省的対話が必要となる読書だと思います。

そこで、今回は、私が皆さんの「心の中の図書館」に置いて欲しい「深い思考」(一般的な知的活動)を育てるための本を紹介します。

考え方(思考)については、人それぞれ、国それぞれです。
日本語の「十人十色」を用いて表現するのがぴったりかもしれません。

対話では、小さい対話をはじめ、グローバル社会、ビジネスの場まで、自分自身の軸となる、柔軟でありながら、言葉の裏を掴めるような物事を考える際の思考法を身につけていなければなりません。互いの立場を尊重しつつ、自分自身の考えを伝えたうえで、相手の話を耳に傾け、お互いの理解を深めていくような対話を成り立たせるためです。

そこで、まずは『クリティカル進化(シンカー)論 ―「OL進化論」で学ぶ思考の技法』 (道田泰司、宮元博章、秋月りす (まんが)、北大路書房、1999)を紹介します。
本書は、秋月りす(著)の4コマ漫画『OL進化論』を題材に、批判的思考(クリティカルシンキング)が鍛えられるものです。この本を読むことで、私たちの日々無意識に受け入れている社会的前提や価値観や物事を考える「癖」などが可視化され、日常の“当たり前”を疑い、観察・分析・抽象化を通して思考の質を進化・成長させてくれます。
クリティカルシンキングは、特別な学問ではなく、日常生活、グローバル社会、ビジネスの場に必要な対話力を高めるための重要な思考法だと思います。漫画の『OL進化論』(秋月りす(著))を併せて楽しむのもお勧めします。

二つ目は、『知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ』(苅谷剛彦、講談社、2002) です。
皆さんは、大学に入ると、「自ら学ぶ主体」となり、問題を発見、問を立て、議論を行う力―即ち思考力、問い直す力―が求められます。
その思考力も今後の「世界へ通じる対話力」を高めるための土台となります。
今、「人の前で自分の意見をはっきりと表現できない」、「相手の意見に対し、十分に納得していないのに、上手く反論できない」、「常識や一つの視点に囚われて物事の全体像が見えない」などの悩みはありませんか。このような場合、自分なりの視点から、物事を多角的に捉えて考え抜く「知的複眼思考」へ転換してみたらいかがでしょうか。興味のある方はこの本を読んでみてください。

三つ目は、『思考の整理学』(外山滋比古、筑摩書房、1986)(『新版 思考の整理学』外山滋比古、筑摩書房、2024)です。
ご存じの方も多いと思いますが、東大・京大で1番読まれた本、全国大学生協累計販売冊数【文庫部門】堂々と一位になっているベストセラーです。皆さんは、「自分の考えをいかなる手順をふんでまとめたらいいか」がわからなく、焦ったり、自分を責めたりした経験はありませんか。悩むあなたに、是非とも手に取ってほしい一冊です。卒業論文を書くためにも必要だと思います。
※同様に、『「科学的思考」のレッスン 学校で教えてくれないサイエンス』(戸田山和久、NHK出版、2011)、『クリティカルシンキング 入門篇:あなたの思考をガイドする40の原則』(B.ゼックミスタ,J.E.ジョンソン (著); 宮元博章,道田泰司,谷口高士,菊池聡(訳)、1996)、『知的生産の技術』(梅棹忠夫、岩波書店、1969)、『知的生活習慣』(外山滋比古、筑摩書房、2015)、『京大理系教授の伝える技術』(鎌田浩毅、PHP研究所、2013)もお勧めです。

読書は、今回紹介した分野や、歴史書でも、哲学書でも、小説でも、エッセイでも、それぞれの時代や文化を背景として書かれた知性と触れることができるものです。そして、「読書」という行為から思慮深い“考察”が育まれます。
紹介した書籍が皆さんの世界に通じる対話力形成の糧となれば幸いです。
皆さん、是非とも時間のある時、今回紹介した本を手に取って、心の中にある図書館に1冊でも多くの本を並べてみてはいかがでしょうか。

20代のうちに、1冊でも多く最高の本と出会ってほしいです。