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2024.05.20
グローバル・コミュニケーション学部
英語コース2年 長田真依
私にとって、1回生の頃に受講した授業の中で最も印象的だったものはIntroduction to Global Communications(IGC)である。なぜなら、抽象的な説明で終わらされがちなグローバル・コミュニケーション学の重要性について考え直し、学ぶ意義を明確にするうえで、非常に有意義な授業であったからである。そして、最近就職活動を始める中で、私がなぜGC学部を選択したかを振り返る瞬間が多くあるが、本授業の内容は、その理由にもつながると考えた。本稿では、私が留学先で得た学びとグローバル・コミュニケーション学について振り返り、グローバル人材とは何かについて考察していきたい。
IGCの授業の中で印象的だった学びは、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違いから生まれる国民性やコミュニケーションの仕方の差異である。この授業では、言葉の背景で起こっている出来事に対する共有性が低く、言語による表現を重視するローコンテクスト文化と、その逆に、言葉よりもコンテクストに重点を置くハイコンテクスト文化を持つ国の違いに触れた。これを前提にコミュニケーションを取ることは、相手の考え方を柔軟に受け入れやすくなるという点で、異文化理解に欠かせない要素のひとつであることを学んだ。2年次の留学先では、この分野についてさらに深く勉強したいと考えていた。
私は、去年の12月末までカナダのオンタリオ州に位置するBrock大学で10か月間留学していた。そこでは、主にリベラルアーツ科目を受講し、現地の学生と肩を並べて、日々のディスカッションやグループワークを行った。その中でも一番印象に残っている科目が、“Introduction to Media and Communication Studies”である。本科目は基礎科目ではあるが、グローバル・コミュニケーション学を学ぶ自分にとって、1回生の時の学びに関連した内容かつ新しい学びも多かったため、非常に興味深かった。
本講義の中で期末に課された個人課題では、異文化コミュニケーションに焦点を当てて取り組み、外資系企業など多様な文化を持つ人々が混在するビジネスオフィスを想定したIntercultural Communicationについてプレゼンテーションを行った。先ほど紹介したハイコンテクスト・カルチャー/ローコンテクスト・カルチャーのような異文化に関するその他の前提を用い、異文化ビジネスコミュニケーションについて調査した。その過程では、日本や韓国などのCollective societyを持つ文化とアメリカ・ヨーロッパなどの Individualistic societyの風潮を持つ国でコミュニケーションや言葉の違い、習慣などあらゆる面で人の動き方が大きく異なるという発見もあった。
下図は、World Repopulation Review が発行したIndividualistic Countries 2024であり、個人の目標達成などを集団行動よりも重視するIndividualismなカルチャーを持つ特性が高い国ほど青色で示されている。この図によると、アメリカと日本では大きな差があることが分かる。これは先ほど挙げたハイ・コンテクスト/ロー・コンテクストにも通じる概念である。例えば、人間の思考は言語に依存するのではないかという考えを提唱するSapir-Whorf Theoryの例が挙げられる。他言語に比べるとヒンディー語には「Relatives/親戚」という意味を持つ単語が多くあるが、それはインドという国が個人よりも家族や仲間など集団を大切にする考え方であるcollectivistの文化を持つ国であることに繋がる。実際私の友人のインド出身の子にも質問すると、この仮説に賛同していた。以上の情報より、インドは日本と同じで、collective society、そしてハイ・コンテクストカルチャーを持つ国であることが伺える。このようにコミュニケーションをする相手がどういった環境・文化で育ったのかを知ることによって、相手によって距離の縮め方を変えることが、より綿密で円滑な意思疎通に繋がるのではないだろうか。
図Ⅰ「Individualistic Countries 2024」 World population Review(2024)
留学中には、これまで日本で育ってきた私にとって、友人と遊ぶ時やホストブラザーとの何気ない会話、買い物中など至る場面で、文化の違いに驚き、それから学ぶことの多さに気づいた。Individualism/Collectivismなどの異文化コミュニケーションを円滑にするための理論や文化的前提は様々あるが、実際のコミュニケーションの中でしか経験できないことも多々ある。グローバル化した現代世界の中で労働力の活用、原料の獲得、さらなる成長を求めた海外収益の増加などの理由から、日本企業の海外進出が拡大されつつあるが、それが対中・対米関係等、外交問題に発展するケースも多々存在する。そのような社会の中で、複雑に絡み合う要素や背景を考慮し、理解したうえで、高度な外国語力だけではなく文化が異なる相手ともスムーズなキャッチボールを行うことが大切である。そして、それを国際社会の中で自らのアイデンティティを保ちがながらも実践し、何らかの形で社会に還元できるようにすることがグローバル・コミュニケーション学を学ぶ意義であると考える。
さらにグローバル人材とは、体験や机上の理論に留めず、それらを活用し、学び・経験として自分の中へ落とし込み、社会で応用できるスキルとして有効活用することで、世界の人々の生活を便利にする存在である。あるいは、問題を解決できる人材のことであると思う。つまり、異文化を知り尽くし、理解したうえで、郷に入っては郷に従えの精神を実践できる人間である。または、異文化に対して試行錯誤しながらも粘り強く、柔軟に向き合っていける人であり、現地に溶け込み、異文化を理解したいという情熱を持った人物であるのではないだろうか。
以上の経験と考察から、GC学部の理念に掲げられている“Negotiator・Facilitator・Administrator”には、このような意味がこもっていると解釈し、深く理解することができた。そして、グローバル・コミュニケーション学を専攻する意義を深めることができた。
【参考文献】
World population Review. ‘Individualistic Countries 2024’ .
https://worldpopulationreview.com/country-rankings/individualistic-countries. 2024/02/20.