GC学部の学生が学内外へ情報発信するGC学会の機関誌「Cosmos」の記事をお届けします。
(GC学会は、GC学部の全ての学生と教員で構成された学会です。)
2022.09.15
7月11日、東京・吉祥寺のデザイン会社を経営している 徳永健先生による「デザインはコミュニケーション:誰かの想いを伝わるカタチに変換してみると」の講演会に参加した。
先生は、日本の伝統的なカードゲームである「かるた」を活用した「吉祥寺かるた」を制作・販売しておられる。これは、実際吉祥寺に住んでいる地域住民が日常生活の中で経験している「あるある」を集めたものとして、吉祥寺ならではの文化や特色を世の中に知らせることができた。
そして、吉祥寺の人であれば誰でも共感できる「吉祥寺かるた」は、そのユニークさからの地域活性化はもちろん、住民同士での新たなコミュニケーションの場を作る事業を行っていた。
日本人であれば誰でも知っている「かるた」を通じて新しいコミュニケーションの道具を作ろうとする先生の試みは、「まちカタルカ」の制作につながった。
「まちカタルカ」は、「町について語るカード」という意味を持っており、カードに書かれている問いから自分の街に関する経験や偏愛を話すゲームである。
カードの中には、「この町にしかないと思うもの」「この町に住んだ(来た)理由」等、本来のかるたのように正解を追求するものではなく、気軽に自分の経験について語れる質問が書かれていた。
そして、初対面の人と一緒に「まちカタルカ」のゲームをしてみたところ、典型的な自己紹介ではなく、互いへの理解を一層深める会話が進められたため、距離をぐっと縮むことができた。なぜなら、自分が住んでいる町に関するごく個人的な話をすることで、自分という人について紹介することができたからである。
今回のデザインに関する講演会で学んだのは、デザインを利用したコミュニケーションの方法だけではない。講義の中で、先生は、アーティストとして「目的型の人生」よりは「展開型の人生」生きたいとおしゃっていた。
確かに、多くの人は、人生を生きていく上での明確な目標意識が最も大切だという。そして、他の道に外れることを怠慢や責任回避として受け止め、中途半端なものを許さない傾向が強まっている。しかし、グローバル化が進み、人生におけるより多くの選択肢を手に取ることができた私たちに、「明らかな目標」は欠かせないのであろうか。
もちろん、はっきりとした目標を掲げることは、それを成し遂げるための具体的な計画を立てるに役立ち、大きなモティベーションになる。
しかし、「まちカタルカ」が初対面での人とのコミュニケーションの場で有効な理由は、そこに明確な目標がなく、自由に自分の意志を表現することができるからである。
同じく、現在のグローバル社会では、一定の分野だけに集中することより、多くの人々と会話し自分の視野を広げていくことが求められる。つまり、先生は、唯一な正解を探すことだけに終始せず、より多様な挑戦を行い、より多様な経験を積むことのできる生き方を勧めていたのである。
徳永先生の「まちカタルカ」に正解はない。同様に、私たちの人生の中にも、自分の性格や興味などから起因した自由意志は存在するものの、正解はない。従って、今回のデザイン講習会では、デザインを人々の間でのコミュニケーションツールとして活用する事例だけではなく、今後どのような人生を生きていくかに関する考察ができた。
(日本語コース2年生)
この度の7月11日の特別講義「デザインはコミュニケーション」で、徳永健先生の会社で作った、佐久穂町 イエナプランスクール 設立準備財団のロゴを見ることができました。
その財団が持っている理念とイメージをそのまま盛り込んで、その意味を伝えることができるようにデザインされたそのロゴは、デザインという分野についてよく知らない私の目で見ても、財団のイメージとよく合っていて一目で分かることができました。
そのためか、それを見た時、きれいで良いと思いましたが、ロゴに込められた意味について説明を聞いたら、もっと魅力的に感じました。しかし、今回の講演で、何より良かった点は、初対面の人とも人間関係をうまく形成できたことでした。
その方法とは「まちカタルカ」です。
デザインというものが企業の代表的なイメージを具象化するということもとても魅力的でしたが、それ以上に、デザインという領域が私たちの人間関係の形成にも活用できるということが、本当に面白く感じました。
既に、普段の授業の中で、初対面の学生同士で自己紹介の後、お互いについて質問して、関心を持ちながら自然に関係を形成していくという体験がありましたので、それに対してこの「まちカタルカ」が、どれほど効果的なのかを深く理解することができました。自分の故郷にまつわる簡単な質問カードに答えることで、故郷に対する愛着を感じることもでき、新しい関係で気楽に話を続けることができる、いわゆる対話の種を見つけやすくなったからです。
日本では誰でも一度はやったことがあるカルタというカードゲームに、新しい機能を加えて使うことになったため、さらに興味深く利用できたのではないかと思いました。ちょっとした新しさを加えることで、本来とは全く違う感じのゲームになるのを体験しながら、これが視点の転換がもたらした効果ではないかと考えました。
今回の講演を通じて、私はデザインがどれほど多様な部分で活用されているのかを確認し、この分野について関心を持つようになりました。
そしてすでにデザインと関連した仕事に関心を持っている人にはぜひ参加してほしい講演会だったと思います。
(日本語コース2年生)