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2024.01.09
グローバル・コミュニケーション学部
日本語コース3年 イ ユナ
私は、同志社に入学する前から言語について多くの興味を持っていた。そして、入学してからも、日本語の勉強をしながら留学生たちと日本語の難しい点について多くの話をしてみた。しかし、日本人たちが韓国語の学習にどのような難しさを感じているのかについて話し合う機会はほとんどなかった。
そのような中、グローバル・コミュニケーション学科で行っている「タンデムパートナー」活動に参加する機会があった。タンデムパートナー活動は、日本人学生と外国人留学生がお互いの言語について教え合いながら、言語・文化の交流の場を作ることを目的として作られた。そのため、毎年多くの日本人学生が英語・韓国語・中国語・ベトナム語などを学びたいと思いこのプログラムに参加する。そして、韓国語の母語話者である私は、韓国語を学びたい日本人とチームを組むことができた。
タンデムパートナー活動をしながら、多くの日本人学生が韓国語の発音を難しく感じ、コミュニケーション上の困難を経験していることが確認できた。特に、彼らは、韓国語の要素の一つである「パッチム」の使い方に多くの難しさを感じていた。日本語は発音の連結がスムーズである反面、韓国語はパッチムのある文字によって音節が途切れる場合がある。その為、多くの日本人韓国語学習者が正しい発音する上で困難を経験している。私は、音節とパッチムによる発音をどのように伝えるべきか気になり、それに関する教育学の研究を進めるようになった。
調査を進めたところ、日本語と韓国語の様々な違いについて気付くことができた。例えば、特定の単語における音節数(拍)の違い等がある。ユン(2015)は、「받침 batchim パッチム」という単語の音節数における日本人と韓国人の認識調査を行った。その結果、韓国人はほとんど2音節であると答えた反面、日本人は2音節~4音節まで多様な回答が出た。それから、韓国語単語において、韓国人と日本人が考える音節数が異なっていることが明らかになった。これは、特に日本人の韓国語学習者に対し、音節の区切りを紛らわしくする要因の一つになっている。
図1:日韓の単語の音節数に関する調査(出典:ユン[2015])
さらに、日本語で韓国語のパッチムがどのように表記されているかが分かった。わたなべ(2019)によると、日本語では、韓国語の多くのバッチムを「ん」で表していることが分かった。韓国語には、[m][n][ŋ]等、形は同じであるものの発音は異なる沢山のパッチムが存在する。しかし、日本語では、すべてのバッチムの発音が「ん」で統一されているため、韓国語単語の細かい差を区別することができず、コミュニケーション上の問題が生じていたのである。
図2:韓国語のパッチムの種類と日本語での読み方(出典:わたなべ[2019])
日本語と韓国語は、同じ漢字文化圏の言語であり、語順や発音も多く似ている。実際、自分も日本語を学ぶ際、それほどの難しさは感じていなかった。そのため、日本人の韓国語学習者もそうであろうという偏見を持っていた。しかし、今回の研究を通じて、両方の言語は、パッチムの活用や発音において様々な違いを持っており、これが学習の困難にもつながっていることに気付いた。
各言語の相違点について理解した私は、アルファベット記号やカタカナで韓国語の発音を知らせることには多少の限界があることを実感した。それから、自分のタンデムパートナーの発音の改善のため、自ら効果的な方法を工夫してみた。
パッチムのある韓国語の場合、英語やカタカナに変えると発音の誤りが生じる場合が多い。その為、発音を他の言語で変換することなく、そのまま受け入れるように手助けした。また、今回の先行研究を通じて、単語の真ん中で発音しやすい音節を追加して発音することがエラーの改善に効果的であることを知った。今後のダムテンパートナー活動では、この法についてもっと研究し、伝えようと考えている。このような発音練習を半年間続けた結果、韓国語のパッチムを自然に受け入れ、発音を多く改善させることができた。
以上の経験から、私は、日本人韓国語学習者の現状について多くの興味を持つようになった。それから、今後も、卒業論文や言語に関するプロジェクトなどを通じて、両国の発音の違いについて詳しく研究したいと思った。さらに、韓国語の発音について分かりやすく説明する教育法が未だに整っていないことから、発音の改善のための効率的な方法も模索したいと思った。
これからの研究計画としては、日本人韓国語学習者を対象に発音しにくい単語と文章を基にアンケートを作って調査したい。そして、日本人学習者を対象としたインタビューを通じて、どのような部分で発音エラーが発生するのかについて研究する予定である。
参考文献
ユンウンギョン(2015)「L1とL2の音節構造の違いに対する実験音声学的知覚実験」『東岳語文学』第64幕.pp.409-438.東岳語文学界
わたなべちさ(2019)「韓国語音節末子音の発音教育方法に関する研究:日本人学習者を対象に」pp.34-45.国民大学