GC学部の学生が学内外へ情報発信するGC学会の機関誌「Cosmos」の記事をお届けします。
(GC学会は、GC学部の全ての学生と教員で構成された学会です。)
2026.03.24
多くのGC学部生が卒業後に選択する旅行業界。そこではGC学部でのどんな学びが活かされているのでしょうか。今回私たちはホテル業界で活躍されている1名の卒業生をお招きし、京田辺キャンパスにてラウンドテーブルディスカッションを行いました。実際の日々の実務から、海外からの宿泊客への対応など幅広いテーマについてお話を伺いました。GC学部で培った英語力やコミュニケーション力、多文化理解は、現場でどのように活かされているのか。また、学生時代の経験がどのように現在の仕事につながっているのかについても、具体的なエピソードを交えながら語っていただきました。
【卒業生ゲスト紹介】
東村 茉莉映 様(GC学部2期生)
• 勤務先:Four Seasons Hotel Kyoto(外資系ホテル)
• 留学先:University of Winnipeg (カナダ)
■留学で得た学び
城一:本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。最初に、学生時代のお話についてお伺いしてもよろしいでしょうか。留学時代に心に残っている出来事や大事にされている思い出はありますか。
東村:一番意識していたことは、「自分のあたりまえが、あたりまえではない」ということです。私のホストファミリーは黒人系のご家庭だったのですが、生活習慣や家族構成も、私が育ってきた環境とは大きく違っていました。生活習慣の違いにも戸惑うことが多く、私が子どもだったこともあり、最初はなかなか受け入れられず、毎日のようにぶつかってしまうこともありました。ただ、その中で「私はこうする」「私たちの家庭ではこうする」と、お互いの考えをすり合わせることで、少しずつ理解できるようになりました。その経験から、私は留学で英語を学んだというよりも、人によって「あたりまえ」だと思っている考え方や生活習慣は大きく異なるのだ、ということを学んだと感じています。
■ ホテル業界との出会い
城一:では次に、就職に関する質問に移らせていただいてもよろしいでしょうか。私は現在就職活動をしていまして、特にホテル業界が気になっています。今日はホテル業界のことをたくさん聞いていきたいと思っているのですが、まず現在の仕事に就くまでの経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか。
東村:元々海外駐在についてはあまり考えていませんでした。インバウンド需要が高まっていたこともあり、海外に行くよりも日本にいた方がチャンスが多いと感じていたからです。実際、現在働いている外資系ホテルでは、お客さまの約9割が海外の方なので、日本にいながら国際的な環境で働けており、現状では海外に出る必要性を感じていません。また、実は私は最初からホテル業界を目指していたわけではありませんでした。接客業は絶対向いてないだろうなと決めつけていて、就活中は外資系の事務職や貿易関係などを中心に見ていました。しかしなかなか就職先が決まらず、思い切って違う分野にも挑戦してみようと考え、そこからホテル業界にも目を向けるようになりました。結果的にはご縁があって今の仕事にたどり着いたという感覚です。
■外資系ホテルで働くということ
両角:日系ホテルと外資系ホテルでの違いはありますか。
東村:日系ホテルは一括採用が多いですが、海外のホテルチェーンでは各ポジションが空いたタイミングで応募を出すケースが一般的です。そのため、ホテル業界のウェブサイトに登録し、自分の条件に合う求人が出たら応募する、というのが有効かと思います。ただ、最近は日本にある外資系ホテルも新卒一括採用を取り入れるケースが増えてきましたので、学生の皆さんは就活サイトにエントリーして情報を手に入れるほうがいいかもしれませんね。また、国内で数多くの新規ホテルのオープンが続いているので、オープニングメンバーにチャレンジするのもおすすめです。新規オープンのホテルの方が、研修制度が整っていることも多く、未経験からでも入りやすいと思います。
両角:最初はどういった仕事を担当されていたのでしょうか。
東村:私はまずベルデスクから担当していました。
城一:ベルデスクというのはどんな仕事ですか。
東村:お客様のお荷物を運んだり、お車の手配をしたりする仕事です。
城一:海外のお客さんが多いということは、英語を使うことも多いのですか。
東村:そうですね。感覚として会話の80%は英語で話しています。社内の公用語はもちろん英語なので、スタッフ間も英語で話しています。
両角:スタッフ同士で、大変だと感じることはありましたか。
東村:自分の意思や主張をしっかり伝える必要があるということです。日本だと「頑張っていれば評価してもらえる」「相手もきっと同じ気持ちだろう」という考えがあるかもしれませんが、外資系では察してもらう文化はほとんど通用しません。「これを成し遂げた」「自分はこうしたい」ということをアピールしないと、意見がない人だと思われたり、チャンスを逃してしまうこともあります。
両角:最初はアピールすることも大変でしたか。
東村:日本人としてどうしても謙遜の文化があるので、最初は外国人スタッフとのコミュニケーションやアピールの仕方に苦労しました。ただ、逆を言うと、やる気が認められればどんどん昇進や異動ができるのが外資系です。私は新卒でベルデスクからスタートし、2年後、スーパーバイザーに昇進させていただきました。その後、キャリアアップを考えている旨を上司に伝えたところ、「ホテル業界を長く続けるなら、裏方の仕事も経験しておいた方がいい」と言われたことをきっかけに、ハウスキーピング(ベッドメイキングやルームチェックなど客室をつくる仕事)に異動することを決めました。2年ほどハウスキーピングで業務した後、再びお客様と直接お話できる部署に戻りたいとの意向を伝え、フロントに異動願を出しました。フロントは業務内容が幅広いため、一度ポジションを下げての異動となりましたが、日々の業務を着実にこなすこと2年、スーパーバイザーに再び昇格させていただきました。このように、個人の意思やビジョンを明確に伝えることができれば、年齢や性別に関わらず評価してもらえるのは、外資系の強みかなと思います。
両角:「アピール」というのは、主にご自身が何をしてきたのかを伝える、という意味なのでしょうか。
東村:どちらかといえば、自分が今後どうなっていきたいのかという将来像をアピールすることが多いです。例えば、海外駐在をしたいという目標を伝えていれば、マネージャーから海外駐在に必要な知識を身につけるためのプログラムへの参加を勧められることもあります。そこで一定の成果を出せば、目標に見合った仕事を任せてもらえることにつながります。
1日の業務スケジュール(フロント)
※4交代制のうちの一例
(早番:7:00-16:00 中番:9:00-18:00 遅番:13:30-22:30 夜勤:22:00-7:00)
■仕事のやりがい
城一:現在のお仕事においてやりがいや大変なことはありましたか。
東村:今はフロントの仕事をしているのですが、チェックアウトの際にお客様から「素晴らしかったよありがとう!」とお褒めの言葉をいただく時は、やはり嬉しいですね。あとは、フロントでの会話の中で観光地をおすすめさせていただいて、数時間後に「とてもよかったよ」とお客様が笑顔でお戻りになられた際には、この仕事をしていてよかったなと感じます。大変なことは、先程と重複してしまいますが、スタッフもお客様も多国籍であることにより、人によってやりたいことが違うという点です。例えば、私の考えた対応でAさんが喜んだとしても、Bさんが喜ぶとは限りません。一人一人に合った対応をすることが求められます。
城一:フロント業務なら、結構短い時間でお客様の嗜好を理解しなければいけませんよね。
東村:そうですね。例えばパスポートにピカチュウのシールが貼ってあれば「どこで買ったの?」と話しかけるなど短時間で情報を引き出すことが大切になってきます。今となっては、言葉はただ話すためのものではなくてそこからどれだけコミュニケーションがとれるのかが大事だということを実感しています。
■学生へのメッセージ
城一:ホテル業界を目指すにあたって学生時代にどのようなことを意識すればよいでしょうか。
東村:個人的には、英語力を伸ばすこと以上に、さまざまな経験を積んでおくことの方が大切だと感じています。例えば日本で働くのであれば、日本文化や日本の魅力を自分自身が理解していなければ、観光客の方に何も説明できません。「今日はこれを食べたいのだけどおすすめはありますか」「周辺で観光したいけどおすすめの観光地はありますか」といった質問を日常的に受けますが、ある程度の知識や経験がないと、仕事として成り立たないと感じます。また、経験を積むことで、海外旅行などを通して自分の価値観が広がると同時に、「日本は素晴らしい国だ」と改めて実感することもあります。多くの経験を重ねることで視野が広がり、自分なりの軸を持つことができます。だからこそ、英語力そのものよりも、人として成長することに重きを置くことが大切だと思います。
お忙しいところご協力いただき、本当にありがとうございました。
■まとめ:座談会から得た学びと私たちの抱負
今回の座談会を通じて、私たちが最も強く感じたのは、東村さんが持つ「経験を通して道を切り拓く姿勢」です。英語を単なるスキルとしてではなく、人と人をつなぐための「コミュニケーションのツール」として使いこなしながら、多国籍な環境の中で自らの価値を発揮していく姿が強く印象に残りました。
城一の学び:特に「さまざまな経験を積んでおくことが大切だ」というお話が印象に残っています。東村さんは、経験を通じて自分の価値観を広げ、それを異なる価値観への理解や「おもてなしの心」につなげてこられたのではないかと感じました。これからは、挑戦する前から諦めるのではなく、何事も経験として捉え、積極的にさまざまなことに挑戦していきたいと思います。
両角の学び:私が最も強く感じたのは、自分のキャリアは受け身ではなく、自ら設計していくものだという意識の重要性です。また、語学力そのものよりも、経験を通して視野を広げ、自分なりの軸を持つことが、結果的に仕事の質や信頼関係の構築につながるという点も大きな学びでした。今回の座談会を通して、私自身も「何をしたいのか」「どんな経験を積みたいのか」を主体的に考え、社会人に向けて準備していこうと思います。
GC学部自学自習室の前で記念撮影を行いました。
座談会当日の様子
(執筆:両角 彩・城一 倖穂)